エンゲージメントの成功事例に関する調査レポート【2026年最新】

エンゲージメントとは、社員・職員が組織とのつながりを感じ、働きがいや成長実感を持って力を発揮できる状態を支える取り組みです。出社回帰後の交流設計に加え、個々の希望や評価への納得感を把握し、育成や配置に反映することが、大企業の組織運営における課題となっています。

このレポートは、2025〜2026年開催の「エンゲージメント」に関連する講演をもとに作成されています。掲載講演の関心は、出社回帰を契機とする交流から、AI(人工知能)による従業員の声の把握と育成・評価への活用へ移っています。一貫しているのは、組織とのつながりを日常の運用で生み出すという問題意識です。近年は特に、個人ごとの兆候を把握し、上司の対話や育成、配置へ結び付ける議論が増えています。

2026年(AIファーストで進む「選ばれる組織」への再設計)

2026年のエンゲージメント課題は、出社を促し交流機会を増やすだけでは、社員・職員に選ばれる組織をつくれなくなった点にありました。2025年に見られた出社回帰を起点とするコミュニケーション施策から、2026年は一人ひとりの希望、成長実感、働きやすさを継続的に把握し、組織運営へ反映する段階へ論点が移っています。IPA「DX白書」でも、DX推進における人材・組織面の課題が指摘されています。年次調査や画一的な福利厚生では、部署や個人ごとに異なる不満、育成ニーズ、評価への納得感を捉え切れず、施策の効果を検証しながら改善する基盤が不足していました。

対策は、働きがいと働きやすさを分けずに扱い、人事データ、意向調査、学習、評価をつなぐ方向へ変化しています。ビズスタに掲載されている2026年の講演では、エンゲージメントを理念浸透やイベントの成果として測るのではなく、日常の育成・配置・上司との対話に組み込むテーマが目立ちます。AIファーストの人事では、従来は人事部門が集計に追われていた従業員の声の整理や、部門・属性ごとの変化の一次把握までを迅速化できるようになりつつあります。ただし、AIが代替できるのは兆候の抽出や情報整理までであり、本人の希望をどう受け止め、上司がどの仕事・育成機会につなげるかという判断と対話までは自動化できません。データを集めること自体から、現場の行動を変えることへ焦点が移りました。

この転換を象徴するのが横須賀市役所です。分須照氏は、「ラーニングライブラリ」によるeラーニング環境を全庁へ展開するとともに、「スマートレビュー」の意向調査を通じ、所属長が部下の希望をタイムリーに把握する仕組みを示しました。重要なのは、学習機会の提供と意向把握を別々の人事施策にせず、上司が育成に生かせる情報としてつないだ点です。また、医療法人慈公会 LeMonみんなの病院は、制度ゼロの状態から紙の人事評価を経てデータ化へ移行する過程を、現場主導で進めました。大規模な制度刷新を先行させず、紙運用で見えていた負担や分断をデータ化によって解消し、評価をエンゲージメント向上につなげようとした事例です。この二つが示すのは、エンゲージメント向上の成果が、施策の華やかさではなく、本人の声が育成・評価・マネジメントに届く運用の質で決まるということです。

共通する潮流は、サーベイの実施や評価のデジタル化をゴールにせず、把握した情報を上司と現場が使える状態にすることです。株式会社フィールドマネージメント・ヒューマンリソース山田博之氏が掲げた「働きがい×働きやすさ」や、株式会社カオナビが扱った課題の可視化と施策運用は、この再定義を表しています。翌年には、データとAIで兆候を見つける速度がさらに上がる一方、企業の差は、検知後に誰が対話し、育成・評価・業務改善へ結び付け、改善を回せるかに現れるでしょう。

2025年(出社回帰で問われた「来る理由」の設計)

2025年のエンゲージメント課題は、出社を求めても社員が組織とのつながりを実感しにくい点にありました。リモートワークの定着後、オフィスは単に業務を行う場所ではなく、「わざわざ来る価値」を提供する場へと変わりました。厚生労働省「労働経済の分析」でも、働き方の変化に対応した人材確保や職場環境の整備が課題として挙げられています。従来の制度説明、全社イベント、福利厚生の拡充だけでは、部門を越えた偶発的な会話や、日常的な関係形成まで設計し切れなくなっていました。

そこで企業の取り組みは、意識調査で課題を把握して施策を打つ段階から、出社中の行動そのものを変える段階へ移りました。鍵となったのは、交流を「参加を呼びかけるイベント」にせず、飲食や休憩といった日々の行動に組み込むことです。ビズスタに掲載されている2025年の講演には、出社回帰を管理上の要請として扱うのではなく、社員が自発的に人と会いたくなる環境づくりとして捉え直す動きが表れています。エンゲージメントは人事だけの施策ではなく、総務、オフィス、コミュニティ運営をまたぐ経営課題になりました。

この変化を象徴するのが、サントリービバレッジソリューション株式会社の仁賀正典氏、松本俊氏が登壇した「出社回帰時代のエンゲージメント施策 ~「社長のおごり自販機」が作るコミュニケーション活性化の秘訣とは~」です。「社長のおごり自販機」は、飲料を介して社員同士が接点を持つ仕組みとして位置付けられています。数値成果は掲載情報に示されていませんが、会話を促すための特別な場を毎回用意するのではなく、日常の購買行動を交流の入口に変えた点が重要です。また、株式会社みんなの社食の齋藤武仁氏、WeWork Japanの遊上和義氏が登壇した講演は、社食を「会社に来たくなる」オフィス空間の核として扱いました。これは、食事の提供を福利厚生で終わらせず、組織内の関係を再接続する場へ転換する発想です。

両事例から読み取れる2025年の潮流は、エンゲージメント向上を抽象的な意識改革ではなく、社員が毎日触れる体験の設計として実装し始めたことです。成果の測定値を伴う事例は掲載情報からは確認できないものの、解決対象は明確です。孤立しがちな出社、固定化した部署間の関係、目的を失ったオフィスを、飲食と空間を通じた自然な交流へ変えようとしていました。翌年には、こうした接点づくりを土台に、個々の従業員の状態をデータで把握し、育成や配置、施策運用へつなげる動きが強まると考えられます。

全体を通じて、掲載講演では、エンゲージメントをイベントや福利厚生だけで高めるのではなく、日常的な交流、意向把握、育成、評価をつなぐ課題として扱う構図です。2025年のオフィスや飲食を介した接点づくりを踏まえ、2026年はデータとAIを用いて現場の対話と行動につなげる議論へ移っています。

※登壇者の氏名・所属・役職は講演開催当時の情報です。現在の所属・役職とは異なる場合があります。

※本レポートは、ビズスタに掲載された「エンゲージメントの成功事例」をテーマにした講演情報を元に傾向を分析しています。

※市場環境の参照:IPA「DX白書」、厚生労働省「労働経済の分析」

編集者:ビズスタ市場調査チーム

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