離職対策とは、社員が働き続け、成長や活躍を実感できる組織環境を整える取り組みです。採用難や人材流動化が続くなか、大企業では若手の定着だけでなく、キャリア不安、管理職との関係、健康、介護、生活上の制約まで含めて、事業を支える人材をどう維持するかが課題です。
このレポートは、2020〜2026年開催の「離職対策」に関連する講演をもとに作成されています。掲載講演の関心は、業務負荷の軽減からリモート環境での関係性の再構築、人事データを用いた個別支援、AIによる兆候把握へと移ってきました。一貫しているのは、離職を人事だけの課題ではなく事業継続に関わる課題として捉える視点です。近年は特に、AIと人事データを活用し、現場の対話、配置、育成、生活支援へつなげる議論が増えています。
2026年(AIファーストで離職対策を経営実装へ)
2026年の離職対策で企業が直面した中心課題は、退職理由が職場環境や処遇だけでは捉えきれなくなったことです。採用難と人材流動化を背景に、キャリアの行き詰まり、評価への不信、職場での孤独、物価高による生活不安、突然始まる介護が重なり、社員が働き続けられる条件そのものが問われました。IPA「DX動向調査」でも、DX推進を担う人材や組織づくりが課題として挙げられています。離職対策は人事の個別施策ではなく、現場のマネジメント、事業戦略、生活支援をつなぐ経営課題へと広がりました。
前年まで重視されたのは、サーベイによる本音の把握、心理的安全性、メンタルヘルス、若手のオンボーディングでした。しかし、リスクを把握しても人事だけが対応する運用では、個々の事情に即した打ち手を現場で実行できません。研修や面談が単発で終われば、社員は将来の選択肢を見いだせず、賃上げだけでは生活不安を吸収しきれません。従来のトップダウン型マネジメントも、多様な人材を一律に管理する手法として限界を迎えました。見える化を離職予兆の発見で止めず、誰が行動を変えるかまで設計する必要が生まれています。
そこで取り組みは、AIと人事データを用いて離職リスクや評価ギャップを可視化し、その情報を現場の幹部・マネージャーへ渡して適切に任せる方向へ変化しました。フリー(株)の飯田将央氏が示した「情報を渡し、正しく任せる」考え方は、人事が個別対応を抱え込むのではなく、労働インフラ、動機づけ、企業文化を一体で整える発想です。AIによって、従来は担当者の経験や面談の質に左右されがちだったリスク把握と評価のずれの発見を、現場の対話と育成につなげられる段階に入りました。同時に、キャリア自律を点の研修から継続的な仕組みに変え、福利厚生で実質的な手取りを支える動きも強まっています。
この変化を象徴するのが、ブックオフグループホールディングス株式会社です。川口佳子氏は、HRBrain組織診断サーベイで組織状態を可視化し、経営層から現場までを巻き込む人事施策を進めています。成果として離職率5%を示しつつ、次の段階ではサーベイ結果をタレントマネジメントと結び、事業拡大に伴う人材の多様化に対応する人材データベースの構築を目指しています。また、株式会社クレア・ライフ・パートナーズが扱ったファイナンシャル・ウェルビーイングや、厚生労働省の上田真由美氏が示した仕事と介護の両立支援は、制度を用意するだけでは定着につながらず、社員が必要な時に使える相談・運用体制が重要であることを示します。2026年の潮流は、離職者を引き留める対症療法から、データで兆候をつかみ、現場の判断と生活・キャリア支援を連動させる予防型経営への転換です。翌年は、AIの分析精度よりも、現場が得た情報を信頼関係、配置、育成にどう還元したかが成果を分けるでしょう。
2025年(「突然の離職」を予兆に変える心理的安全性とデータ活用)
2025年に企業が直面した中心課題は、退職意思が表面化した時点では手遅れになりやすい「びっくり退職」でした。特に若手・Z世代だけでなく、事業を支えるハイパフォーマーや、負荷を抱えながら働き続ける現場人材の流出は、採用コストだけでは測れない事業継続上のリスクです。IPA「DX白書」でも、DX推進における人材・組織の変革が課題として挙げられています。離職対策は人事部門の定着施策から、現場の状態を把握し、組織の生産性を守る経営課題へと位置付け直されました。
それまでの対策では、退職面談や年次サーベイ、福利厚生の拡充によって「辞める理由」を把握しようとしてきました。しかし、従業員が本音を言えない職場では、調査結果も面談記録も危険信号を捉えきれません。2024年には若手育成、キャリア自律、介護との両立、制度設計など多面的な施策が重視されましたが、2025年は施策の有無よりも、日常のストレス、成長実感、上司との関係性といった離職の前兆をどう掴み、個別対応へ結び付けるかが焦点になりました。対策は全社一律の満足度向上から、心理的安全性を土台にした継続的な把握と介入へ移っています。
この変化を象徴するのが、業務データと従業員体験を結び付ける取り組みです。株式会社RevCommは、MiiTelによるAIを活用した応対品質評価を、コールセンターにおけるフィードバックの効率化、従業員のストレス軽減、カスタマーハラスメント対策に結び付けました。評価者の経験や時間に左右されがちだった指導を、日々の応対データに基づく改善へ変える考え方です。NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社は、コンタクトセンターで顧客体験のフィードバックとスタッフのEX向上施策を連携させ、離職防止だけでなくパフォーマンス向上を目指す方向性を示しました。また、株式会社HRBrainはサーベイを用い、ハイパフォーマーを含む人材流出リスクを見極める手法を扱いました。これらが示すのは、離職を結果指標として追うのではなく、業務品質、負荷、本音、関係性の変化を早期指標として扱う必要性です。
ビズスタに掲載されている2025年の講演からは、離職対策が「辞めさせないための制度」から、「辞める前に声を拾い、仕事の進め方そのものを改善する仕組み」へ変わったことが読み取れます。心理的安全性、メンタルヘルス、性格特性、サーベイ、AIによる品質評価は別々の施策ではなく、従業員が不調や不満を抱え込む前に把握し、現場管理職が対応できる状態をつくるための手段です。翌年には、こうした可視化を個別の離職予防にとどめず、EX、キャリア、介護、経済的不安まで含めた従業員体験の再設計へ広げる動きにつながっていきます。
2024年(若手離職から介護離職まで、定着を事業継続で捉え直す)
2024年の離職対策は、若手の早期離職だけを防ぐ人事施策では足りなくなりました。売り手市場のなかで採用した人材が定着しないことに加え、成長実感を得られない「ホワイト離職」、中途入社者の立ち上がり不全、メンタル不調、介護による離職が、事業継続を左右する課題として重なりました。厚生労働省「令和5年雇用動向調査」が示す雇用の流動化も背景に、企業は「辞める人を引き留める」だけでなく、社員が働き続ける理由と活躍できる環境をどうつくるかを問われました。とりわけ2025年4月の育児・介護休業法改正を控え、介護を個人の事情ではなく経営リスクとして扱う動きが強まりました。
従来の賃上げ、福利厚生の拡充、エンゲージメントサーベイ、1on1の導入は、それ自体では離職防止につながりにくいことも明確になりました。調査結果を集めても改善の優先順位が定まらず、対話の目的や管理職の役割が曖昧なままでは、社員の本音やキャリア不安を捉え切れません。若手に一律の研修を施す方法も、配属後の孤独感、成長機会への不安、上司との関係といった個別要因には対応しにくい状況でした。2023年までの講演ではエンゲージメントの可視化やオンボーディングの重要性が中心でしたが、2024年は可視化した課題を現場の育成、仕事の意味づけ、生活支援へ結び付ける実装段階に移りました。
象徴的なのが三和建設です。採用・定着が難しい建設業で、新卒3年以内の離職率を50%から0%へ改善し、2020年採用以降もゼロを継続しています。7年間で社員数を約2倍に増やしながら、経営陣と社員が企業像・社員像を対話し、教育寮(ひとづくり寮)を通じて若手の成長と組織への接続をつくりました。一方、PwCコンサルティング合同会社は、心理学、脳神経科学、東洋伝統医療の知見を組織変革に取り込み、従業員エンゲージメント調査結果が80%を超え、離職率も低下を継続しているとしています。さらに株式会社日立製作所は、仕事と介護の両立を制度整備にとどめず、風土醸成と意識改革を伴う継続施策として位置付けました。これらが示すのは、定着の成果が福利厚生の有無ではなく、社員が成長を実感し、困難を相談でき、生活上の制約が生じてもキャリアを継続できる仕組みから生まれるということです。
2024年の潮流は、離職を単一の原因で説明せず、採用前から入社後の育成、日常のマネジメント、キャリア自律、健康、介護までをつなぐ「人材定着戦略」へ再定義した点にあります。人的資本経営においても、離職率を結果指標として追うだけでなく、組織文化、上司との関係、成長機会、生活との両立を改善対象にする方向へ進みました。翌年には介護制度の周知・利用促進が企業の実務課題となり、サーベイや人事データで兆候を捉え、現場が個別支援へ動けるかが焦点になります。定着施策は「辞めさせない」防衛策から、社員の活躍と事業の持続性を同時に高める経営基盤へ変わり始めました。
2023年(人的資本開示が変えた「辞めさせない」組織設計)
ビズスタに掲載されている2023年の講演からは、離職対策が人事の個別課題から、事業継続と企業価値に直結する経営課題へ移ったことが読み取れます。人材不足に加え、若手の早期離職、管理職との関係、メンタル不調、育児・介護との両立まで、離職の要因は多層化しました。人的資本開示で離職率が注目されるなか、厚生労働省「令和5年版厚生労働白書」も担い手の減少を課題として指摘しています。採用強化、福利厚生、年1回の調査だけでは、退職に至る前の不適応や配置のミスマッチを捉えきれなくなりました。
そこで企業の取り組みは、辞める理由を事後的に分析する段階から、入社前、入社直後、配属後の日常までを連続して設計する方向へ変化しました。焦点は、若手を一律に定着させることではなく、本人のキャリア観、スキル、心身の状態、上司との関係を把握し、配置・育成・働き方を調整することです。エンゲージメントも調査のスコアを上げる対象ではなく、生産性、成長実感、事業への貢献を生む基盤として捉え直されました。人事情報、就業データ、健康データをつなぎ、施策を小さく試して改善するアジャイル型の運用が求められ始めています。
この変化を象徴するのが、サイボウズ株式会社とセプテーニグループ株式会社 人的資産研究所の実践です。青野慶久氏が掲げる「100人100通りの働き方」は、画一的な制度ではなく個人の事情に合わせて働き方を選べるようにする考え方であり、サイボウズ株式会社は離職率を5%に抑えています。また、進藤竜也氏は入社後最初の3カ月のオンボーディングが、3年後のハイパフォーマー出現率、離職率、営業成績を左右すると示しました。早期離職を本人の適応力の問題として扱うのではなく、受け入れ時のつまずきを分析し、職場側の設計を変えるべきだという転換です。株式会社SmartHRも、入社手続きから人事データ基盤を整え、定着施策を継続的に改善する必要性を打ち出しました。
これらの事例が示すのは、離職防止の成果は単発の研修や面談の実施数ではなく、個人の状態を把握し、配置、上司の関わり、成長機会、柔軟な働き方を結び直せるかで決まるということです。2023年は、若手のリアリティショック、管理職のマネジメント負荷、介護などのライフイベントを、別々の制度で処理する対策から脱却する起点となりました。翌年には、こうした人事データと現場対話を基に、世代や職種ごとの離職要因を特定し、オンボーディングやキャリア支援をより精緻に設計する流れへつながっていきます。
2022年(採用・待遇では埋まらない、入社後の「なじまなさ」という離職課題)
2022年の離職対策で企業が直面した中心課題は、採用難そのものよりも、採用した人材が組織との接点を持てず、早期に「ここでは働き続けられない」と判断することでした。オンライン採用とテレワークの浸透は採用の間口を広げた一方、入社前後の相互理解、配属後の関係構築、若手のキャリア展望を弱めました。Z世代の就社意識低下やリアリティギャップ、管理職との対話不足、介護を言い出せない従業員の突然の離職まで、問題は一律の定着施策では捉えきれないものになっています。IPA「DX白書」でも、変化に対応する人材の確保・育成が課題として挙げられており、離職対策は人員補充ではなく事業変化を支える人材戦略として扱われ始めました。
それまでの給与改善、福利厚生、研修実施、エンゲージメント調査だけでは不十分になりました。株式会社ハイフライヤーズの事例は象徴的です。認可保育園『キートス』では、給与や待遇を手厚くしても離職率は改善しませんでした。そこで若年層が求める承認に着目し、感謝を共有する取り組みに切り替え、離職率の大幅改善と売上7%向上につなげました。この事例が示すのは、処遇は離職の前提条件ではあっても、日々の貢献が認められ、仕事の意味を実感できる関係性の代替にはならないということです。測定も同様で、ビズスタに掲載された講演では、エンゲージメントを可視化しても施策に結び付かないという課題が繰り返し扱われました。
取り組みは、退職の兆候を把握して引き留める発想から、採用・受け入れ・育成・配置・対話をつなぎ、個人が活躍できる条件を設計する方向へ変わりました。セプテーニグループでは、オンライン化の利点と課題、Z世代の特性を踏まえ、10年間の実証研究を通じて改善してきたオンボーディング施策を提示しました。新人を一括研修で終わらせず、組織に適応し、活躍しやすく、辞めにくい状態へ段階的に導くことを重視した点に意義があります。また、株式会社日立ソリューションズは、人的資本経営への関心と若手・中堅層の離職への危機感を背景に、2022年度からEX向上を本格化させました。従業員の体験を起点に課題を捉えることで、人事制度の整備だけでは見えにくい現場の反応を改善の材料にしようとしたのです。
これらの事例から読み取れる2022年の潮流は、離職を人事だけのKPIではなく、従業員が会社で成長し、貢献を認められ、生活課題とも両立できるかという経営課題へ再定義したことです。1on1、個人の動機の把握、キャリア自律と会社戦略の接続、リスキリングと評価制度の一体設計、仕事と介護の両立支援が同じ文脈で語られたのはそのためです。前年のリモート環境における孤立・コミュニケーション対策から一歩進み、2023年にはエンゲージメントを生産性や事業変革につなげる基盤として、育成、管理職支援、データ活用を運用段階へ移す流れにつながっていきます。
2021年(採用難より深刻になった、リモート下の組織分断)
2021年の離職対策で企業が直面した中心課題は、採用難そのものよりも、コロナ禍で接点が失われた既存社員をいかに組織につなぎ留めるかでした。リモートワークは働く場所の制約を減らした一方、日常の雑談、上司による変化の察知、同僚との相互理解を薄くしました。総務省「令和3年版情報通信白書」でもテレワークの広がりと働き方の変化が示されているように、離職は待遇だけの問題ではなく、組織との関係性が見えなくなる問題として現れました。とりわけ若手や入社直後の社員では、仕事の意味、自身への期待、相談相手をつかめないことが定着を阻むリスクになっていました。
従来の離職対策は、福利厚生や退職金制度の整備、年次ごとの研修、退職者への対症的な面談に偏りがちでした。しかし、制度を用意するだけでは、リモート環境で生じる孤立や、職場ごとに異なるマネジメントの質を捉えられません。人事DXを扱う講演でも、ツール導入や外部支援だけでは成果につながらないという問題意識が示されました。必要になったのは、従業員の状態を可視化し、現場が対話と業務運営を継続的に変える仕組みです。離職率という結果指標を追うだけでなく、信頼、共感、活躍実感といった離職の手前にある兆候へ目を向ける転換が始まりました。
この変化を端的に示すのが、株式会社manebiの「見える化→共創→仕組み化」による共感オンボーディングです。同社は、入社者を一方的に組織へ適応させるのではなく、社員と組織の幸せを共に確立する過程として受け入れを再設計し、離職率を30%から3%へ改善しました。一方、株式会社ビズヒッツは、リモートワーク導入時に相次ぐ離職を経験した後、専門家との対話で問題点を特定し、マネジメントを見直しました。その結果、離職率の低下とリモートでの円滑なコミュニケーションにつなげています。サイボウズが離職率28%だった組織の危機から「100人100通りの働き方」へ至った経験も、画一的な統制ではなく個人の事情と組織の秩序を両立させる必要性を示します。重要なのは、柔軟な働き方を福利厚生で終わらせず、組織運営の原則として扱った点です。
ビズスタに掲載されている2021年の講演から読み取れる潮流は、離職防止が「辞める人を引き留める施策」から、「辞めたくなる状態を早く把握し、現場で関係性を立て直す経営課題」へ再定義されたことです。エンゲージメント解析、価値観データ、オンボーディング、キャリア自律は別々の施策に見えて、社員を管理対象ではなく組織を共につくる存在として扱う点でつながります。翌年にはこの基盤の上で、エンゲージメントの可視化を実際の変化へ結び付ける運用、入社前からのフォロー、1on1やキャリア支援へと論点が進みます。2021年は、その後の人的資本経営につながる離職対策の出発点として、組織の分断を可視化し直した年でした。
2020年(離職対策を「人員補充」から応対設計へ変えた年)
2020年にカスタマーサポート部門が直面していた中心課題は、オペレーターの離職と、応対品質・顧客満足を同時に維持する難しさでした。問い合わせ量や事業の展開範囲が広がるほど、個々の担当者の経験や負荷に依存する運営は疲弊を招きます。離職は単なる人員不足ではなく、教育コストの増加、対応品質のばらつき、顧客接点の弱体化につながる経営課題でした。IPA「DX白書」でも、DXを進めるうえで既存業務の変革や人材面の課題が指摘されていますが、離職対策においても、現場の負荷を減らす業務設計が問われ始めた年だったといえます。
従来の対策では、欠員を採用で埋め、研修やマニュアル整備で応対品質をそろえることが中心でした。しかし、問い合わせを人が電話で受け続ける前提では、件数増加がそのまま現場負荷の増大になります。品質を守ろうとすれば教育や確認の工数が増え、効率を優先すれば顧客体験が損なわれかねません。2020年に必要になったのは、離職を個人の定着施策だけで捉えるのではなく、負荷の高い応対プロセスそのものを再設計することでした。
この転換を象徴するのが、TerraSkyDays 2020 Onlineに掲載されたLINE株式会社の取り組みです。LINE株式会社は、グローバル展開するLINEプラットフォームの顧客対応において、LINE公式アカウントとSalesforceを連携させ、有人チャットとAIを組み合わせたノンボイスサポートを構築しました。その結果、ボイスレスの対応で顧客対応の満足度は90%を超え、対応時間の短縮と対応件数の増加も実現しています。武井淳氏、飯塚純也氏、株式会社テラスカイの岩井哲郎氏が登壇したこの事例の重要性は、顧客満足を維持するために人員を増やすのではなく、顧客接点をデジタルへ移し、人が担うべき対応に集中できる構造へ変えた点にあります。
この年の潮流は、離職対策を「辞めた人を補う施策」から「辞めたくなる業務負荷を減らす施策」へ広げたことです。AIやチャットは人を完全に置き換えるためではなく、反復的な問い合わせや電話中心の制約を減らし、担当者がより質の高い対応に時間を使うための基盤として位置付けられました。翌年には、リモートワーク下のコミュニケーションやエンゲージメントの可視化が離職対策の主題になります。2020年はその前段として、業務のデジタル化が従業員体験と顧客体験を同時に改善し得ることを示した年でした。
全体を通じて、掲載講演では離職を結果として捉えるのではなく、業務負荷、組織との関係、成長機会、生活との両立に表れる兆候として捉える構図です。議論の中心は、制度や採用による補充から、現場が個人の状態を把握し、働き方や育成を改善する仕組みへ移っています。
※登壇者の氏名・所属・役職は講演開催当時の情報です。現在の所属・役職とは異なる場合があります。
※本レポートは、ビズスタに掲載された「離職対策の成功事例」をテーマにした講演情報を元に傾向を分析しています。
※市場環境の参照:IPA「DX動向調査」、IPA「DX白書」、厚生労働省「令和5年雇用動向調査」、厚生労働省「令和5年版厚生労働白書」、総務省「令和3年版情報通信白書」
編集者:ビズスタ市場調査チーム